社団法人 日本不動産鑑定協会

年 頭 所 感

会長


 新年明けましておめでとうございます。会員の皆様にはつつがなく新しい年を迎えられたことと、心よりお慶び申し上げます。

 国民の選択により1年3ヶ月前に歴史的な政権交代を果たした民主党政権が今、国の内外に極めて困難な課題に直面しています。新しい年は現政権にとって正念場の年となります。又、我が国の景気の動向は金融、経済、産業の国際化の波動の中で、先行きが読みにくい局面にあり、国民にとっては昨年に引き続き厳しい試練の年となります。

 会員の皆様には繰り返し申し上げていることですが、政局が、又、景気がどう動こうと、我々不動産鑑定士の業務が公正・中立なものでなければならない本質は何等変わることなく、又、我が国に定着した不動産鑑定評価制度を支える専門資格者としての社会的責任と役割も何等変わることはありません。時代が好景気にあっても驕ることなく、不景気にあっても怯むことなく、国民の信頼と社会のニーズに応えて専門資格者として社会的使命を果すことが肝要であり、このことによって、はじめて、業界の繁栄が約束されることと確信いたします。

 業界の真の繁栄は明快なビジョンを共有することによって、はじめて実現が可能となります。本会の主要業務の一環として昨年11月に「不動産鑑定業将来ビジョン研究会」を本会組織として立ち上げ、下部組織として素案作成を担当する3チームを編成しました。業界を取り巻く社会・経済の目まぐるしい環境変化による新たな市場ニーズに迅速、的確に対応し、業界の成長戦略の指針となるべきビジョンを策定するとともに、その成果については業界として自律的に実行する分野と制度改正・創設が必要なものについては、国に要請して制度の実現を図ることが設置の趣旨であります。

 ところで、「かんぽの宿」の鑑定評価が昨年5月に新聞報道で問題視され、昨年11月21日付 朝日新聞の一面トップの見出しに「かんぽの宿不適正鑑定か」と掲げた記事が掲載されました。不動産鑑定評価と会員の社会的信頼を揺るがす重大な事案であり、新聞報道に先立ち、昨年3月の段階で危機管理対応特別委員会において本事案を取り上げ、先ず、事実関係を正確に把握する為に鑑定評価を行った業者会員に再度に亘りヒヤリングを実施するとともに、総務省に鑑定評価書の開示を請求し、今般、綱紀委員会に調査を指示したところであります。全国に亘る多数案件が対象となりますが、所要の手順を尽くし、是は是とし、非は非とする公平な心を持って事実解明に努めています。

 明るい話題として、第25回PPCが昨年9月27日から30日まで「財政危機、グローバルな不確実性と国境なき競争 - 今後10年間の専門職業家の挑戦」をメインテーマとして、インドネシアのバリ島で開催され、当協会のスピーカー4名の会員が研究成果を発表し、このうち「オフィスキャップ・レートと環境要因の関連性~東京における実証研究」をテーマに発表した 小松広明 会員が「ベスト・ペーパー賞(最優秀論文賞)」に選ばれました。環境付加価値について実例を挙げて実証した平易、簡潔な報告に対する聴衆の称賛が印象に残り、鑑定評価の分野における国際化に我が協会の果す役割に対する期待と手応えを感じました。又、調査・研究の分野では、調査研究委員会が発表した「収益用不動産の利回り実態調査」が資産評価政策学会の業績賞を受賞しました。受賞理由は「実際に取引された収益用不動産の利回り事例を収集並びに分析し、その実態を実証的に把握した本件調査は、複合不動産の鑑定評価における還元利回り、判断材料の根拠資料を提供するものであり、実務において有用な役割を果すものとして授賞に値する」とされています。これまで「知的財産権の適正評価システム - 基本的考え方から実例研究」、「平成21年世界地価等調査結果」が同賞を受賞しています。調査、研究の成果が着実に社会の評価を積み重ねる不断の努力が、やがて、国民と会員共有の財産となることが期待されます。

 この外に多くの困難な課題が目前にあります。これに怯むことなく会員一人ひとりの皆様とスクラムを組んで前進することが年頭にあたっての私の心意気であります。

 厳しい試練の年です。会員各位の一層のご健闘を心よりお祈り申し上げます。

平成23年1月
社団法人日本不動産鑑定協会
会 長  神 戸 冨 吉


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